2011年6月5日日曜日

閑話休題-クリステンセン教授の近況

現代のイノベーション理論の第一人者と言えばハーバート大のクリステンセン教授です。

教授は現在、重い病の床にあるそうです。

日経ビジネス2011.6.6号にクリステンセン教授の近況と、日本の災害に対する教授のエピソードが掲載されていました。

ところで、クリステンセン教授の提唱しイノベーションのジレンマという概念の概要は以下の通りです。


1.優良企業は顧客のニーズに応えて従来製品の改良を進め、ニーズのないアイデアについては切り捨てる。
イノベーションには従来製品の改良を進める持続的イノベーションと、従来製品の価値を破壊するかもしれない全く新しい価値を生み出す破壊的イノベーションがある。
優良企業は持続的イノベーションのプロセスで自社の事業を成り立たせており、破壊的イノベーションを軽視する。




2.優良企業の持続的イノベーションの成果はある段階で顧客のニーズを超えてしまい、顧客はそれ以降においてそうした成果以外の側面に目を向け始め、破壊的イノベーションの存在感が無視できない力を持つようになる。



3.他社の破壊的イノベーションの価値が市場で広く認められた結果、優良企業の提供してきた従来製品の価値は毀損してしまい、優良企業は自社の地位を失ってしまう。

 
つまり優良企業は自社の勝ちパターンによって首を絞められることになるという話です。
 
日本製の携帯電話のガラパゴス現象などには当てはまるかもしれませんね。
 
クリステンセン教授は病の中で被災に苦しむ日本の経営者からの手紙に対して次のような助言をしたそうです。
 
おおよそ次のような内容です。
 
私は病と格闘するなかで絶望的な気持ちになっていたが、他の人に奉仕をする心を忘れていた。
 
私の不幸の原因は私の自己中心的な考え方にあって、自分自身を“復興”するプロセスを通して、幸福とは私利私欲、私心を捨てて初めて手に入るものであることに気がついた。
 
人の命ははかない。人生で最も大切なことは後回しにしてはいけない。「いつの日にか」という日が必ず訪れるという保証はどこにもないのだ。
 
 
イノベーションの大家であるクリステンセン教授の助言にはイノベーションに全く触れていないというのが印象的です。
 
クリステンセン教授の言いたいことは、限りある命を与えられた人間がなす「仕事」の目的を見つめなおそう、今の日本人ならその意味が分かるはずだということのようです。


(浅沼 宏和)