2012年2月3日金曜日

閑話休題-執筆のリズム

昨年から今年にかけて執筆の量が数倍に増えました。

特に単著を立て続けに刊行したことで、作家さんの苦労が多少感じられるようになりました。

私の場合、本の執筆は次のような感じになるようです。


ステップ1
出版が決まり、企画書の内容に沿って各種の書籍・資料を大量に読み込む。このインプットは知的好奇心が満たされ、大変な割には楽しくやれる仕事です。


ステップ2
締め切りが気になるようになり文章を書きだす。これが本当に大変で、「こんなような話でまとめたい」を具体的な文章にするのが大変です。
理想と実際の文章のギャップに悩まされ、ちょっとつまづくと挫折して本をまた読み込むという行きつ戻りつが続きます。


ステップ3
締め切りが迫ってくるとハイテンションになります。およそこの時期が10日~2週間ぐらい続きます。
精神が高揚してきてかけそうな気がどんどん湧いてくるのですが、あとちょっとのところで言葉が出てきません。
そこでジョギングに出かけたり入浴したりして気分を変えて少しずつ文章を絞り出すということを繰り返します。
睡眠も極端に少なくなり体力的にもかなり消耗します。このステップを1か月続けることは不可能です。


ステップ4
なんとか締め切りに合わせて文章が出来上がります。私は納期までにできる限り内容を高めるという方式なので、納期遅れがあったとしても数日から1週間といったところです。
提出した直後は極度の解放感で景色が明るく見えます。


ステップ5
ハイテンションの状態から通常の状態に戻ると、精神的な落ち込みが来ます。
「もっとうまく書けたはずなのに」という思いが次々と起きてきて自己嫌悪になります。
またハイテンションの状態で思いついた文章については、おおよその内容は思い出せるのですが、具体的な記述はどんどん忘れていきます。
数日すると何を書いたのか自分でもわからない状態になります。


ステップ6
ゲラがあがってくると少し自信を取り戻します。なにせレイアウトがきれいになりますので文書もよく見えてきます。
ゲラチェックをするのですが、自分の文章なのに「へえ~」「そうなのか!」「なるほど!」と独り言をいったりします。
不思議な話ですが自分が書いた文章ではなく他人の文章を読んで添削している感じになります。


ステップ7
本が完成します。きれいな装丁を見ると気分が晴れやかになります。しかし、読んでくれた人がどんな反応をするのかが気になるようになります。
本屋さんで自分の本を手に取っている人を見かけると買ってくれるかどうか気になってずっと観察してしまいます。


まあ、こんな感じです。




(浅沼 宏和)